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L/C(信用状)-Letter of Creditは、国際輸送を伴う取引において一般的に使われる書類の一つです。国際貿易の場合、取引相手は遠方にいて顔が見えないこともありますし、特に新規取引を開始する場合などには不払いなどのリスクが懸念されます。

L/Cはこうした取引上のリスクを減らすために使われています。

L/Cがあれば、それを発行した銀行が支払いの保証をしてくれるため、遠方にいる相手との取引を円滑に行うのに非常に役立つ書類となります。ですから、L/Cについてよく理解することは貿易を行う上で必須であるといえます。

ここではL/Cについて、それがどのような目的で使われ、取引においてどんな意味を持っているのか、またL/Cに関する定めにはどのようなものがあるのかを詳しく見てゆきます。

L/Cとは何か


貿易におけるL/Cとは、輸入者の依頼によりL/C発行銀行が発行する保証状のことを指します。L/Cにおいて、L/C発行銀行は輸入者に代わって代金の支払を約束します。なお、この約束には輸出者にディスクレがない場合という条件がつきます。

L/C取引の意義


先ほど述べたようなL/Cを伴う取引は、L/C取引と呼ばれています。では、L/C取引を行う意義とは何でしょうか?

それはL/Cを介することによって、輸出者・輸入者双方のリスクや不安を減らし、取引をスムーズに始めることができるという効果があることだと言えます。

取引条件が前受・前払の場合、輸入者としては「輸出者は本当に貨物を船積してくれるだろうか?」という懸念が生じます。反対に、取引条件が後受・後払であると、輸出者側に「輸入者はきちんと代金を支払ってくれるのか?」という心配が出てきます。

こうした不安を、L/C発行銀行が間に入ることで、取引条件にかかわらず軽くしてくれるのがL/Cの効果なのです。

L/C取引のメリット

輸出者側のメリット

まず輸出者にとっては、一流銀行が支払いを確約してくれるので、代金回収のリスクがカバーされ、また船積後すぐに銀行が権利を買い取ってくれるため、その時点で早々に代金を受け取ることができます。

この意味で輸出者にとってはL/C取引には二重のメリットがあるといえます。

輸入者側のメリット

一方輸入者にとっても、L/C取引はL/C取引によって輸出者を拘束することができること、さらに前払方式の決済と比較すると、資金負担が軽減されるというメリットがあると考えられます。

L/C取引のデメリット

L/C取引のデメリットとしては、輸入者にとって、L/C開設の際に銀行から担保を要求される場合があり、これが金銭的負担になる点が挙げられます。この点を考えると、L/C取引とするかどうかは、相手方の信用状況等によって検討した方が良い場合もあるでしょう。

L/Cについての規則


L/Cに関する規則としてはICC(International Chamber of Commerce/国際商業会議所)による信用状統一規則(UCP600)があります。ここではそれぞれの規則について見てゆくことで、L/Cというものが持つ性質について考えてみます。

信用状独立抽象性の原則

信用状独立抽象性の原則というのは、L/C取引における、発行銀行から受益者(輸出者)に対する支払いの保証は、取引におけるその他の契約や条件から独立しているとする定めのことです。

銀行の支払い保証が独立しているというのは、例えば輸出者が契約違反等をし、輸入者がそれによって支払いの差し止めを銀行に要求したとしても、銀行は輸出者に支払いを行うということです。

一見不条理に見える定めかもしれませんが、L/Cの効力がそれだけしっかりと保証されているということであり、またそのことによってL/C取引というものが国際取引において重要なものとなっているのです。

書類取引の原則

書類取引の原則とは、輸出者が揃える船積書類に書類上の瑕疵がなければ、たとえ貨物に瑕疵があったとしても発行銀行は代金の支払いを確約しなければならないという定めです。

この定めの意図は、銀行は貨物についての責任を負わなくて良いように、ということだと考えられます。銀行は船積書類だけをチェックすればよく、貨物についてはチェック機能を負わないということです。

銀行に対して優しい定めのようにも思えるかもしれませんが、現実のケースを考えてみれば、全てのL/C取引について銀行が貨物のチェックを行うことは無理だとわかると思います。

ただ、L/C取引のルールとしての脆弱性はここにあるとも言われています。つまり、L/C取引であっても、不安がある場合は輸出地での検査や品質証明書の添付を求めたりして、貨物の検品を行う必要があるということです。

厳格一致の原則

L/C取引においては、船積書類を通知銀行が買い取ることによって輸出者に対する支払いが行われます。この際、船積書類および荷為替手形の内容がL/C条件と一字一句に到るまで一致することが条件とされていることを、厳格一致の原則と呼びます。

実務においては、特に輸出者は確実に支払いを受けるためにも書類の正確性を期することが重要です。

発行銀行が主たる債務者

L/C取引においては、発行銀行は輸入者の従たる債務者ではなく、取引の主たる債務者としてL/C金額の支払いを保証すると定められています。この定めによって、受益者は輸入者に支払いの催告をしなくても、発行銀行に対して直接支払いを求めることができます。

まとめ

ここではL/C取引について、その定義や目的、関連する規則について見てきました。L/C取引は貿易において欠かせないものであり、これについてよく知っておくことで、取引における代金決済を深く理解することができます。

次回以降、L/Cの開設や、L/Cの種類についても考えてみたいと思います。