投稿日:2025.07.07 最終更新日:2025.07.07
アマゾンが名古屋に西日本最大の物流拠点を開設、脱炭素と自動化の先にある次世代ロジ戦略とは

EC業界最大手のアマゾンが、日本国内の物流体制強化を一段と加速しています。
2024年8月、名古屋市に延べ床面積12万5000㎡のフルフィルメントセンター(FC)を稼働させ、西日本最大の物流拠点となる見通しです。
筆者も物流業界に携わる立場として、この動きは単なる物流機能の強化を超えた、サプライチェーン再設計の一環と捉えています。
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名古屋港に西日本最大級のFCが誕生
今回アマゾンが新設する「ロジクロス名古屋みなと」は、三菱地所がアマゾン専用に設計した大型物流施設です。
保管容量は約3万9,000立方メートルにおよび、商品の保管から梱包までの中核機能を担います。
配送拠点(DS)と組み合わせることで、当日〜翌日の配送エリアを一気に拡大。西日本の配送効率を劇的に高める「中継点」として機能します。
GHG削減を意識した“脱炭素型倉庫”
このFCの注目点は、GHG(温室効果ガス)削減が設計段階から組み込まれている点です。
・地中熱空調システムの導入 ・世界初、壁面設置型の太陽光発電設備 ・低炭素型コンクリートの採用
倉庫そのものが「脱炭素の装置」となり、建材調達から修繕・廃棄までライフサイクル全体でCO2削減を目指しています。
このような取り組みは、企業評価や投資判断にも直結する戦略的施策といえるでしょう。
配送拠点の全国展開と“当日配送戦略”
アマゾンは今後、岡山・千葉・福岡・石川・東京・北海道にDSを新設予定。初進出エリアも含め、全国規模での当日・翌日配送ネットワークを構築中です。
また、FCとDSの機能を併せ持つハイブリッド型の新拠点を16カ所に展開予定。
入荷から配送までを1カ所で完結できる“次世代型ロジスティクス拠点”です。
午後11時59分までの注文を翌朝に届けるエリアも拡大予定で、地方でもスピード配送が現実になろうとしています。
ロボット100万台突破、生成AI「DeepFleet」で連携最適化
アマゾンは技術面でも積極展開を続けています。
・全世界で100万台目のロボットを日本FCに導入 ・生成AI「DeepFleet」でロボット群を制御・最適化 ・移動時間を約10%短縮し効率化
DeepFleetの導入により、複数ロボットの群制御が可能となり、倉庫内の動線効率を自動構築。
さらに自動仕分け、ラベル貼付、積み降ろしなど、日本発の自動化技術も導入され、将来的なグローバル展開も視野に入っています。
「ヒト×テクノロジー」が物流競争力の源泉に
アマゾンの戦略から見えてくるのは、倉庫が単なる保管場所から、情報とテクノロジーによる処理拠点へ進化しているという現実です。
脱炭素対応・スピード配送・自動化といったキーワードは、もはや業務改善にとどまらず、経営の差別化ポイントとなりつつあります。
我々のような中小フォワーダーやロジスティクス企業にとっても、「ヒトの強み」×「テクノロジーの活用」こそが今後の競争力の源泉になるでしょう。