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欧州主要港の混雑が臨界点。スケジュール崩壊と“時間リスク”の時代へ

欧州主要港の混雑が臨界点。スケジュール崩壊と“時間リスク”の時代へ | イーノさんのロジラジ

2025年の夏。ヨーロッパ航路での混乱は数字では測れないレベルに達しています。

ニュースでは「運賃が高騰している」「スエズ運河を通れない」といった話が中心ですが、実際の現場では、それ以上に深刻な“見えない混乱”が広がっています。

欧州港湾混雑の実態と、それが実務にどんな影響を与えているのか、物流担当者としてどう動くべきかを踏まえてお伝えします。

スエズ回避の次に来たのは「欧州港の詰まり」

紅海情勢の影響で、アジア〜欧州間の船はスエズ運河を避けて、アフリカ南端の喜望峰経由の航路へと切り替えられました。

これだけでも輸送日数は片道10日以上延びていますが、もっと厄介なのはその先。

いま欧州の港では「船が着いても入れない」という事態が起きています。

ロッテルダムやアントワープ、ハンブルクといった基幹港でバース待機が80時間超のケースも。

地中海側のジェノアやピレウスも例外ではなく、荷役の順番待ちが発生し、トランシップや内陸輸送にも影響が出ています。

混雑の正体は「三重苦」

この混雑は単に船が多いからではありません

現場では、以下の三重苦が重なっています。

  • スエズ回避による集中入港:寄港タイミングがばらけず、一気に船が到着
  • 労働問題と人手不足:アントワープのスト、ロッテルダムの人員不足
  • アライアンス再編による負荷増:「Gemini Cooperation」による混在が原因

これらが重なり、港は機能不全に近い状態になっています。

港の外でも物流が詰まっている

問題は港の外にも広がっています

例えば、ライン川の水位低下でバージ(内陸船)が運航できず、鉄道はストライキや保守工事で停止中。

結果として、港で引き取れないコンテナが積み上がり、ヤードも機能低下しています。

これはまさに物流の詰まりが雪だるま式に拡大している状態です。

混雑なのに運賃は“下がっている”という矛盾

意外かもしれませんが、欧州向けの運賃は下落傾向にあります。

たとえば上海〜ロッテルダム間のスポットレートは、2025年初頭比で約30%減

その理由は、2024〜2025年にかけてメガコンテナ船が大量投入されたことで、船腹が余っているためです。

港が混んでいても、「運賃が安く見える」状態が続いています。

実際に上がっているのは、時間と間接コスト

港湾混雑により、Congestion Surcharge(混雑サーチャージ)が新設されるケースも。

運賃は下がっていても、実務では総コストがむしろ上昇しています。

そして何よりの問題は、納期が読めないということ。

これはサプライチェーンにとって大きなリスクです。

まとめ:今求められるのは、柔軟な物流戦略

欧州主要港では、航路変更・労働問題・アライアンス再編が重なり混雑が深刻化。

運賃は安く見えるが、実際には間接コストと納期リスクが増大しています。

物流担当者には、柔軟な対応力と“遅延前提”の戦略的設計力が求められます。

動画視聴はこちらから