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メタノール燃料とは?次世代コンテナ船を支える海運業界の脱炭素ソリューション

メタノール燃料とは?次世代コンテナ船を支える海運業界の脱炭素ソリューション | イーノさんのロジラジ

メタノール燃料の現状と課題

船舶の次世代燃料として注目を集めるメタノールですが、どういう燃料なのでしょうか?

メタノール燃料ってどんなもの?

メタノールは化学式CH₃OH、アルコールの中で最もシンプルな構造を持っています。

常温で液体、取り扱いやすいという特徴があり、すでに化学品や医薬品の原料として広く使われています。


最近では船舶燃料としての注目も高まっており、今は世界で年間1億トン程度の需要ですが、2050年には5億トン規模に拡大、そのうち船舶向けも“億トン単位”になると見られています。

メリットと課題

メタノールの良い点は、SOxやPMをほぼ出さないこと。

NOxも最大80%削減できるという高い環境性能があります。

また、常温液体であるためLNGやアンモニアよりもタンク設計が簡単で、既存インフラが活かしやすいのも利点です。

船員にとっても扱いやすい燃料とされています。


ただし、発熱量が重油の半分なので、燃費的には2倍必要になります。

そのためタンク容量を増やす必要があり、貨物スペースに影響が出やすいという課題があります。

GHG削減の本丸は「グリーンメタノール」

GHG削減という点では、従来型メタノールは重油比で約1割減にとどまります。

LNGよりも見劣りするのは、現在流通しているメタノールが天然ガスや石炭由来だからです。


そこで期待されているのが、バイオメタノールe-メタノールです。

バイオメタノールは、家畜の糞尿や都市ごみを原料にし、メタンを回収しながら製造され、GHG削減効果が大きいとされています。

e-メタノールは、再生可能エネルギーで作った水素と回収CO₂を合成して製造され、カーボンニュートラル運航を実現できます。

規制対応のカギはライフサイクル評価

EUのFuelEUマリタイム規制では、燃焼時だけでなく製造段階も含めたGHG排出を「ウェル・トゥ・ウェイク(Well-to-Wake)」で評価します。

つまり、天然ガス由来のメタノールは重油より不利に扱われる一方で、グリーンメタノールは優遇されるという仕組みです。

この枠組みを活用して、従来型とグリーンメタノールを併用し、規制クリアを目指す船社も増えています。

グリーンメタノール普及の壁

ただし最大の問題はコストです。

現在は従来メタノールの3〜4倍と高価です。

中国や欧州で生産は始まっていますが、生産量はまだ限られています


たとえば、マースクは中国の金風科技と供給契約を結んでいますが、本格普及には技術支援と補助策が必要とされています。

まとめ

メタノールは環境性能・インフラ適応性・取り扱いやすさの面で非常に有望な燃料です。

しかし、本当にゼロエミッションに近づけるにはグリーンメタノールの普及が不可欠

そしてそのためには、コストの引き下げと安定供給体制の構築が鍵を握ります。


燃料調達そのものがビジネスモデルを左右する時代が、海運業界に到来しているのです。

動画視聴はこちらから