投稿日:2025.09.09 最終更新日:2025.09.09
メタノール燃料とは?次世代コンテナ船を支える海運業界の脱炭素ソリューション

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メタノール燃料の現状と課題
船舶の次世代燃料として注目を集めるメタノールですが、どういう燃料なのでしょうか?
メタノール燃料ってどんなもの?
メタノールは化学式CH₃OH、アルコールの中で最もシンプルな構造を持っています。
常温で液体、取り扱いやすいという特徴があり、すでに化学品や医薬品の原料として広く使われています。
最近では船舶燃料としての注目も高まっており、今は世界で年間1億トン程度の需要ですが、2050年には5億トン規模に拡大、そのうち船舶向けも“億トン単位”になると見られています。
メリットと課題
メタノールの良い点は、SOxやPMをほぼ出さないこと。
NOxも最大80%削減できるという高い環境性能があります。
また、常温液体であるためLNGやアンモニアよりもタンク設計が簡単で、既存インフラが活かしやすいのも利点です。
船員にとっても扱いやすい燃料とされています。
ただし、発熱量が重油の半分なので、燃費的には2倍必要になります。
そのためタンク容量を増やす必要があり、貨物スペースに影響が出やすいという課題があります。
GHG削減の本丸は「グリーンメタノール」
GHG削減という点では、従来型メタノールは重油比で約1割減にとどまります。
LNGよりも見劣りするのは、現在流通しているメタノールが天然ガスや石炭由来だからです。
そこで期待されているのが、バイオメタノールとe-メタノールです。
バイオメタノールは、家畜の糞尿や都市ごみを原料にし、メタンを回収しながら製造され、GHG削減効果が大きいとされています。
e-メタノールは、再生可能エネルギーで作った水素と回収CO₂を合成して製造され、カーボンニュートラル運航を実現できます。
規制対応のカギはライフサイクル評価
EUのFuelEUマリタイム規制では、燃焼時だけでなく製造段階も含めたGHG排出を「ウェル・トゥ・ウェイク(Well-to-Wake)」で評価します。
つまり、天然ガス由来のメタノールは重油より不利に扱われる一方で、グリーンメタノールは優遇されるという仕組みです。
この枠組みを活用して、従来型とグリーンメタノールを併用し、規制クリアを目指す船社も増えています。
グリーンメタノール普及の壁
ただし最大の問題はコストです。
現在は従来メタノールの3〜4倍と高価です。
中国や欧州で生産は始まっていますが、生産量はまだ限られています。
たとえば、マースクは中国の金風科技と供給契約を結んでいますが、本格普及には技術支援と補助策が必要とされています。
まとめ
メタノールは環境性能・インフラ適応性・取り扱いやすさの面で非常に有望な燃料です。
しかし、本当にゼロエミッションに近づけるにはグリーンメタノールの普及が不可欠。
そしてそのためには、コストの引き下げと安定供給体制の構築が鍵を握ります。
燃料調達そのものがビジネスモデルを左右する時代が、海運業界に到来しているのです。