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MSC、中国建造船への米国追加料金に対抗!顧客転嫁せずネットワーク再編へ

MSC、中国建造船への米国追加料金に対抗!顧客転嫁せずネットワーク再編へ | イーノさんのロジラジ

今日は「MSCが米国港での新しい追加料金にどう対応したか」というニュースを取り上げます。

米国の新しい追加料金とは?

10月14日から、米国は中国で建造された、あるいは中国が運航する船舶追加料金(300〜600ドル/コンテナ)を課す予定です。

これは輸出入企業にとって大きなコスト増につながる可能性があります。

MSCの対応

世界最大のコンテナ船会社であるMSC(地中海航運)は、影響回避のためにグローバルネットワークを再編しました。

具体的には、中国建造船を米国航路から外し、欧州や中東へ再配置しています。

  • MSC Jeongmin(9,411TEU):過去5年で米国に154回寄港 → 現在は地中海―北欧航路に投入
  • MSC Ivory Coast(8,496TEU):米国航路から撤退 → 西地中海―紅海航路

このようにして、MSCは「追加料金を荷主に転嫁しない」方針を打ち出しています

他社の動き

同様に、CMA CGM顧客に追加料金を課さない方針を発表し、中国建造船を米国航路から撤退させました。

また、中国のCOSCOは対象となるため料金を回避できませんが、顧客への追加請求は行わない姿勢を示しています。

背景にある造船業界の勢力図

注目すべきはMSCの船隊構成です。

現在のMSC船隊の構成は以下の通り:

  • 韓国造船所製:全体の約50%
  • 中国建造船:全体の約25%

しかしさらに重要なのは新造船の発注先です。

MSCは現在、中国の造船所に106隻(190万TEU)を発注しており、韓国への新規発注はゼロです。

つまり、今後のMSC船隊に占める中国建造船の比率は急速に上昇する見込みであり、中長期的には米国の規制を回避しづらくなるリスクがあります。

米中摩擦の中での戦略

今回のMSCの動きは、短期的には「荷主を守る」戦略です。

しかし、長期的には「中国造船依存の調整」が重要なテーマとなるでしょう。


韓国と中国の造船競争米国の対中制裁政策、そして船社の戦略的再編

この三者のバランスの中で、MSCのような巨大船社がどう動くかは、グローバル物流全体に直結します。

まとめ

米国は中国建造船に300〜600ドルの追加料金を課す方針に対し、 MSCはネットワークを再構築し、顧客転嫁を回避。 ただし、今後の船隊構成は中国建造に依存するため、 中長期的には規制リスクが高まる懸念があります。

この事例は「米中摩擦と造船業界の力関係」がどう変わるかを象徴的に示しています。

動画視聴はこちらから