投稿日:2025.10.07 最終更新日:2025.10.07
マースク「ジェミニ体制」で日本物流が転換期へ!北東アジア戦略の全貌

海運大手マースクが打ち出した新体制「ジェミニ」。2025年2月から始まったこの新たな船社連携は、アライアンス構造の転換点として注目されています。
今回は、マースク北東アジアCEO・西山徹氏の発言をもとに、マースクの日本における戦略と今後の物流の行方を探っていきます。
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荷動きは回復、収益構造はより強く
2023年の物流市況の冷え込みを経て、現在は荷動きが回復傾向にあります。
特に日本からの輸出は堅調で、西山氏も「2025年は比較的良好なスタートだった」と述べています。
混乱期で培った運賃交渉力や業務効率化の成果により、収益の質も格段に改善されています。
新体制「ジェミニ」がもたらす定時運航
マースクとハパックロイドによる新体制「ジェミニ」は、従来のアライアンスとは一線を画します。
定時運航(オンタイムパフォーマンス)を重視し、スケジュール遵守率はすでに90%近くに達しています。
従来の大型アライアンスでは「遅れても誰の責任でもない」構造でしたが、ジェミニ体制では高い運航品質と可視性を実現しています。
日本の荷主にとっては、信頼性の高い輸送手段として定着していく可能性があります。
日本市場での「統合型物流」戦略が加速
マースクが目指すのは、単なる船会社から統合型物流インテグレーターへの進化です。
その象徴が、海上輸送(Ocean)と物流サービス(L&S=Logistics & Services)の一体化です。
2023年には千葉・流山に日本初の倉庫拠点を開設し、東京港・名古屋港・神戸港・門司港で陸上輸送・通関・倉庫管理を含めた総合サービスを展開しています。
さらに、関西圏での新倉庫開設も2025年内に予定されており、
- サプライチェーンの可視化
- 納期の安定
- 緊急対応力
といった日本企業のニーズに応える体制を強化しています。
地方港と人手不足のジレンマ
一方で、地方港では深刻な人手不足という課題も顕在化しています。
門司港ではリモート通関を導入し、名古屋港ではドレージ手配の自動化を進めるなど、デジタル技術による効率化を推進しています。
しかし、ドライバーや港湾作業者などの人材確保は依然として大きな課題で、今後の安定的な物流には技術と人の両輪が不可欠です。
統合型物流企業としてのマースクの未来
今回のインタビューからは、マースクが「輸送」から「物流全体の最適化」へと舵を切っている姿勢が明確になりました。
ジェミニ体制による高信頼輸送と、国内での倉庫・通関・配送の一体提供は、まさに物流インテグレーターとしての姿です。
国際輸送の要を握るプレイヤーが、日本市場の陸上物流にも深く入り込むことで、業界全体に大きな構造変化が訪れようとしています。
最後に:フォワーダーはどう立ち向かうか?
マースクのような大手船社が物流業務を一括提供する時代。
フォワーダーには、地域密着型の対応力と専門性の高いサポート力が求められます。
特に中小・地方企業に向けたきめ細かなサービスが市場での差別化の鍵となるでしょう。
フォワーディング業界は、いままさに変革のただ中にあります。
マースクの戦略は、海運の枠を超え、日本の物流全体に大きなインパクトを与えつつあります。