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SGホールディングス、1000億円投じ物流網を再編!佐川急便が挑む“脱・人海戦術”の次なる一手

SGホールディングス、1000億円投じ物流網を再編!佐川急便が挑む“脱・人海戦術”の次なる一手 | イーノさんのロジラジ

2025年10月、佐川急便を傘下に持つSGホールディングス(SGHD)が、国内物流網の大規模再編に乗り出すことを発表しました。

投資額は約1000億円
2028年までに現在全国にある25の中継拠点を3拠点に集約する計画です。

新設されるのは東京・関西・九州の3拠点で、総投資額は約960億円。
荷物を大型拠点に集中させ、拠点間を結ぶ路線便を減らすことで、年間50億円規模のコスト削減を見込んでいます。

25拠点から3拠点へ。物流の“集約化と自動化”が進む

これまでSGHDは全国25カ所の中継拠点で仕分け・輸送を分担していました。
しかし近年は燃料費の上昇人件費の増加など、固定費の重さが課題となっていました。

今回の再編では、荷物を大型拠点に集約し、1日あたり約400便の路線便削減を実現。
さらに、自動仕分け機搬送ロボットを導入することで、年間10億円規模の人件費削減を見込んでいます。

SGHDが目指すのは、「人が動かす物流」から「仕組みが動く物流」への転換です。

背景にある“物流業界の共通課題”

今回の大型投資の背景には、物流業界全体が抱える人手不足とコスト上昇の問題があります。

2024年に施行されたドライバー残業規制「2024年問題」により、人件費は上昇
燃料費や外注費の高騰も加わり、業界全体の収益を圧迫しています。

SGHDの2025年3月期決算では、営業収益1兆4792億円(前期比12%増)と増収でしたが、営業利益は878億円(2%減)にとどまりました。

外注費は19%増、人件費は5%増。値上げだけでは吸収できず、SGHDは「成長より構造改革」へ舵を切りました。
利益を生む仕組みを再構築しようとしているのです。

コロナ特需の終焉、次の勝ち筋は「構造改革」

コロナ禍では通販需要の急増で一時的に追い風を受けた宅配業界。
しかし、現在は需要が平常化し、各社が次の成長軸を模索しています。

SGHDも2021年に東京都内で約1000億円を投じて大型拠点を稼働させましたが、その後は国内需要の頭打ちで利益率改善が課題でした。

今回の再編は、短期的な売上拡大ではなく長期的な収益構造の安定化を目指す“第二ステージ”の投資といえます。

経営戦略の焦点は「資本効率」

SGHDは物流網再編を単なるコスト削減策ではなく、企業価値を高めるための投資戦略と位置付けています。

資金調達には銀行借入を併用し、調達コストの低い負債を活用して資本効率を高める方針です。

同社は2028年3月期にROEを10%→12%、2031年3月期にはROICを13%へ改善する目標を掲げています。

取締役の高垣考志氏は「負債の活用や自己株の取得を通じて、株主資本コストを上回る利益を稼ぐ」と述べ、資本コスト経営への転換を明確に打ち出しました。

“脱・人海戦術”で生き残るための投資

SGHDの改革は、単なるコストカットではなく、「投資による効率化」を重視しています。

大型拠点の導入、自動化設備の整備、AIやデータによる輸送計画の最適化など、人に頼らない物流体制を構築。
将来的な人手不足やコスト上昇にも対応できる仕組みを整えています。

これは短期利益を犠牲にしてでも中長期で持続可能な物流を目指す、構造投資です。

SGHDが掲げるのは、「人が疲弊しない物流」から「技術が支える物流」への転換。
この方向性は今後、業界全体にも波及していくでしょう。

まとめ:効率化は“守り”ではなく“攻め”の戦略へ

SGホールディングスの物流再編は、単なるコスト削減ではなく未来の競争力を生む攻めの投資です。

人手不足・コスト上昇という構造的課題に対し、「現場の努力」ではなく「仕組みの再設計」で応えるSGHD。
効率化とは守りではなく、次の成長を切り開くための「攻めの一手」なのです。

SGHDの挑戦は、脱・人海戦術から始まる。日本の物流が次に進むための転換点となるか注目されます。

動画視聴はこちらから