投稿日:2025.11.07 最終更新日:2025.11.07
海運大手3社、通期利益4420億円に下方修正 コンテナ市況悪化で明暗
11月7日の開示プレスによると、日本の海運大手3社(日本郵船・商船三井・川崎汽船)が通期の経常利益を合計4420億円に下方修正しました。
主因はコンテナ船市況の想定以上の悪化によるものとされています。
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3社の決算概要:いずれも下方修正
2025年4月期から9月期までの決算が出揃い、各社とも業績見通しを引き下げました。
- 日本郵船:1900億円(前回比▲500億円)
- 商船三井:1520億円(同▲180億円)
- 川崎汽船:1000億円(同▲200億円)
3社合計では経常利益4420億円となり、前回予想を大きく下回る結果となりました。
主因はコンテナ船事業の不振
下方修正の背景には、コンテナ船市況の低迷があります。
3社が共同出資するOcean Network Express(ONE)の下期見通しでは、税引き後利益が赤字となる見込みで、これが全体業績に大きく影響しました。
一方で、自動車船事業は堅調です。
紅海情勢の悪化により多くの船舶が喜望峰ルートへ迂回しており、航海日数が増加。船腹がタイト化し、運賃水準の高止まりが続いています。
米中入港料の影響は限定的
また、先日話題となった米中間の入港手数料問題については、「影響なし、もしくは限定的」との見方が強まっています。
アメリカは11月10日から中国関連船への入港料を1年間停止する方針を示しており、来年以降、この政策がどう変化するかが注目されます。
今後の焦点:運賃水準は維持されるのか
現在、多くの自動車船がスエズ運河を避け、長距離航路を取っているため、航海コストが増加し運賃が高水準で維持されています。
しかし、来年もしスエズ運河の通航が再開されれば、海上運賃がどの程度下がるかが次の焦点となります。
ただし、業界内では「大きく下がらない」との見方も強いようです。
理由として、コロナ禍を経て船会社が高水準運賃に慣れ、多少下げても貨物は集まるという自信を持っているためです。
安定的な運賃水準の確立が鍵
筆者としては、運賃が急騰・急落を繰り返すよりも、適正な価格帯を維持し安定した物流を実現することが重要だと考えます。
ロジスティクスの基本は「安定」にあり、今後も持続的なバランスの取れた海運市場が望まれます。
海運3社の決算下方修正は、コンテナ市況の厳しさと同時に、 自動車船の堅調さという“明暗”を浮き彫りにしました。
2026年に向けて、市況回復の鍵を握るのは、航路情勢と運賃水準のバランスです。






