マースクが紅海へ一歩前進　でもスエズ回帰はそんなに甘くない

今日は、マースクが紅海とスエズ運河ルートの通航再開に向けて、ちょっと大きな一歩を踏み出したというニュースについてお話しします。

正直に言うと、「お、いよいよ戻るのか？」と思った方も多いと思います。

ただ、現実はそう単純ではありません。

マースクが2年ぶりに紅海を通った話

今回話題になっているのは、マースクの船が約2年ぶりに紅海を通過したという点です。

シンガポール船籍のマースク・セバロックという船が、あのバブ・エル・マンデブ海峡を無事に抜けました。

この船はインドからアメリカ東海岸へ向かうサービスに入っていて、12月18日から19日にかけて紅海の難所を通過しています。

マースク自身も、これについては「かなり大事な前進だ」と言っています。

ただし、ここは勘違いしちゃいけません。

マースクは「もうスエズ完全復活です」なんて一言も言っていないんですね。

あくまで、安全かどうかを確かめるための最初のテスト航海という位置づけです。

実は他の船社も動き出している

この流れ、マースクだけじゃありません。

ここ最近、他の大手船社もスエズ運河への回帰を探り始めています。

• CMA CGMはインド・米国東海岸サービスでスエズ経由を再開すると発表しました。
• タイのRCLはすでに紅海を通るサービスを始めています。
• ONEやエバーグリーンも、スロットチャーター経由で様子見しつつ関与を増やしています。

背景にあるのは、10月初旬の停戦合意以降、商船への攻撃が止まっているという事実です。

一部の船社は、「今ならギリいけるかも」という判断をし始めているわけですね。

戦争保険料はだいぶ下がった

治安が少し落ち着いたことで、戦争保険料も下がってきました。

ピーク時には船体価格の1％近くまで跳ね上がっていましたが、今は0.2％くらいまで落ちています。

数字だけ見れば、「もう大丈夫そうじゃない？」と思いますよね。

でも、物流って船社だけの話じゃないんです。

立ちはだかるのは「荷主」と「保険」

ここが一番ややこしいところです。

ドイツのハパックロイドが、スエズに戻すかどうかを荷主に聞いたところ、かなりの数が反対しました。

理由はシンプルです。

• 南部紅海を補償対象外にしている貨物保険が、まだたくさん残っている。
• 何かあったら、荷主が丸ごとリスクをかぶる可能性がある。
• 地政学リスクがいつ再燃するか分からず、コストが読めない。

これでは、簡単に「じゃあスエズで行きましょう」とは言えません。

実際、ハパックロイドのCEOも「60日から90日くらいは様子を見る必要がある」とコメントしています。

2026年は「安心を積み上げる年」になる

今回のマースクの動きは、物流が本当に戻れるかどうかを試すテストだと思います。

船社としては、アフリカ迂回で増えた燃料代や船隊コストを、正直もう減らしたい。

でも荷主側は、2年かけて作った「迂回前提の物流」を、リスクが残るスエズに簡単には戻せません。

今後のポイントはひとつです。

「安全に通れました」という実績を、どれだけ積み上げられるか。

それが積み重なれば、保険会社の判断も変わり、荷主の心理も少しずつ動いてくるはずです。

2026年前半は、物流が本当に正常化に向かうのかどうかを見極める、かなり大事な時期になりそうですね。

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