投稿日:2026.02.10 最終更新日:2026.02.10
コンテナ不況でも沈まない?マースクが本気で進める多角化戦略のリアル
正直に言うと、今回のマースクの決算と戦略を見ていて「ああ、ここまで腹を括っているのか」と感じました。
単なる業績解説というより、2026年以降の海運業界をどう生き残るかという強いメッセージが、かなり明確に示されていると思います。
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マースクはもはや単なる船会社ではない
マースクといえば、世界最大のコンテナ船社というイメージが今でも強いですよね。
ただし彼ら自身は、もう何年も前から「自分たちは船会社ではない」と繰り返し語っています。
目指しているのは、コンテナ物流のインテグレーターという立ち位置です。
つまり、
- 船で運ぶ
- 港で捌く
- 陸送する
- 通関する
- 倉庫で保管する
これらをすべて一気通貫で提供する存在になるという戦略です。
数字が示すL&S事業の現状
まずはロジスティクス&サービス、いわゆるL&S事業の数字を見てみましょう。
2025年通期で、売上高は約151億ドル、EBITは約7億ドルとなり、前年比で36%の増益です。
これは明らかに改善している数字です。
ただし、マースクが中期目標として掲げてきたEBITマージン6%には、まだ到達していません。
現時点の水準は4.8%です。
CEO自身も「現状に満足していない」と明言しており、L&Sは成長途中の段階にあると認識していることが分かります。
L&S事業は伸びているが、まだ完成形ではないというのがマースク自身の自己評価です。
対照的に好調なターミナル事業
一方で、はっきりと好調と言えるのがターミナル事業です。
売上高は約20%増、EBITは約31%増と過去最高水準を記録しています。
投下資本利益率、ROICは16.1%に達しており、完全に現在の稼ぎ頭と言える存在です。
この背景にあるのが、ハパックロイドとの新たな提携であるジェミニ・コーポレーションです。
ハブ&スポークを徹底するこの戦略により、マースクの自社ターミナルが主要ハブとして機能し、取扱量が大きく増加しました。
なぜマースクは多角化を急ぐのか
ここが今回の話の核心です。
マースクがここまで多角化を急ぐ理由は、2026年の海運市況がかなり厳しくなると見ているからです。
- コロナ禍に大量発注された新造コンテナ船の竣工ラッシュ
- スエズ運河再開による供給過剰リスク
- コンテナ運賃の下落圧力
マースク自身、2026年の見通しとして、最悪の場合EBITが15億ドルの赤字に転落する可能性まで示しています。
ここまで悲観的なシナリオを公式に示すのは、かなり異例です。
だからこそ、市況の影響を受けにくいL&S事業と、船が動けば必ず利用されるターミナル事業で、利益の土台を固めようとしているのです。
2026年は戦略の答え合わせになる
個人的には、2026年はマースクにとって戦略の答え合わせの年になると見ています。
コンテナ運賃が下落しても、L&Sとターミナルが安定的に利益を生み出せるのであれば、この多角化モデルは正解だったと言えるでしょう。
一方で、L&Sの利益率が伸び悩み、海運部門の赤字を吸収しきれなければ、株主からの視線は一気に厳しくなるはずです。
物流実務者として見ておくべき視点
物流実務者の立場で見ると、非常に重要な示唆があります。
マースクは今後も船だけで勝負する会社ではないという点です。
- 運賃だけで船社を比較する時代は終わりつつある
- 港、倉庫、陸送まで含めた全体最適が前提になる
2026年以降は、「どの船社を使うか」ではなく、どの物流プラットフォームを使うかという視点が、より重要になっていくでしょう。






