投稿日:2025.04.28 最終更新日:2025.04.28
日中、東南アジアで「自由貿易」競争激化 〜TPPの基準維持か緩和か〜

今、世界の自由貿易の主導権を巡って、日本と中国が東南アジアで激しく競い合っています。特に注目されているのが、TPP(包括的・先進的環太平洋経済連携協定=CPTPP)をめぐる動きです。
この記事では、 「なぜ日中が自由貿易を競い合っているのか?」
「中国がTPPに加盟したら何が起こるのか?」について、わかりやすく解説します。
CONTENTS
日中が東南アジアで自由貿易を競う背景
アメリカ(トランプ政権)が発動した高関税政策により、カンボジア、ベトナム、タイなど東南アジア各国は輸出に苦しんでいます。(例:カンボジアは対米関税49%、ベトナム46%、タイ36%)
この状況で、日本と中国が「自由貿易のパートナー」として、東南アジア諸国への関係強化に動いています。
日本は石破首相がベトナム・フィリピンを訪問し、ルールに基づく自由貿易体制の維持を訴えました。一方、中国は習近平国家主席がマレーシアなどを訪問し、経済支援を約束しながら「自由貿易」をアピールしています。
「自由貿易」の意味が違う日本と中国
日本
高い自由化基準(透明性、公平性、国有企業改革、知財保護)を重視。TPPの基準を守り、東南アジアに質の高いルールを広げようとしています。
中国
市場拡大を優先し、自由化基準にはこだわらないスタンス。「自由貿易」を掲げながらも、実際は国有企業優遇や知的財産権問題を抱えたままです。
中国がTPPに加盟したらどうなる?
メリット
・TPPの経済規模が一気に拡大。 ・TPP加盟国にとって中国市場へのアクセスが広がる。 ・中国にも一定のルール順守圧力がかかる可能性。
リスク
・TPPの高い基準が骨抜きになる危険性。 ・国有企業の優遇継続、知財問題未解決のまま加盟すれば、透明性・公平性が損なわれる。 ・中国の政治力によって、TPP内部で分断が起きるリスク。 ・将来、アメリカの復帰が難しくなる可能性。
結論
中国がTPPに加盟すると、「量は増えるが、質が下がる」可能性が非常に高い、ということです。
東南アジア諸国の現実と日本の課題
現実には、東南アジア諸国は中国との経済的結びつきを急速に強めています。ベトナム、フィリピンでは中国が最大の貿易相手国となっています。
外国直接投資(FDI)でも中国が日本を上回る勢いを見せています。かつて日本がリードしてきた「アジアの成長モデル」も、今や中国のスピードと規模に押されつつある状況です。
日本は、自由貿易の「質」を守るだけでなく、スピード感と実利を求める東南アジア諸国のニーズにもっと応える必要があります。
まとめ
・日中は東南アジアで自由貿易のリーダーシップを争っている。 ・TPPをめぐり、日本は「質の高い自由貿易」を守ろうとし、中国は「実利」を追求している。 ・中国がTPPに加盟すれば、経済規模は拡大するが、基準の緩和というリスクも高まる。 ・日本は「ルールと実利の両立」をどう実現するかが今後の大きな課題。