投稿日:2025.06.06 最終更新日:2025.06.06
トラック新法でどうなる?海コン輸送の未来

今日は2024年6月4日に成立した「改正貨物自動車運送事業法」いわゆる“トラック新法”について、国際物流・海上コンテナの現場にどう影響するのかわかりやすく解説します。
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「安すぎる運賃」はもうダメ!
まずこの改正法、何が変わるかというと――
トラック運送業者は「適正原価」を下回るような安すぎる運賃で請け負っちゃダメ!という新ルールが加わりました。
燃料費、人件費、安全確保の費用などを含んだ「適正原価」が国から示され、それを継続的に下回らないようにしないといけません。
これまでは“標準的運賃”というガイドがありましたが、今後はそれも廃止されます。
さらに、運送許可も5年ごとの更新制に。ドライバーに適切な待遇をしているか、などが確認されるようになります。
“下請けの下請け”は禁止方向に
運送業者がさらに他の業者に再委託する「多重下請け」も問題視されてきましたが、これも原則2回までに制限する方向で義務化されていきます。
そして、「白トラ」と呼ばれる無許可の業者への委託も禁止へ。業界の“質”を上げて、ドライバーの地位向上と長く働ける環境を整えるのが狙いです。
でもコストは上がる…荷主の負担も
当然ながら、この動きは荷主にも影響します。
たとえば海上コンテナの国内陸送コストは上昇すると予想されています。
特に、港から工場や倉庫までの距離がある場合、今までよりも数万円単位で費用が増えるケースもありそうです。
これまで、「ドレージ業者は必ずしも適正価格をもらえていなかった」という声もありましたが、今後はそれが是正されていきます。
ドライバー不足の現実と高齢化
そもそも背景には、トラックドライバー不足の深刻化があります。
2030年には日本全体で輸送能力が34%も不足すると言われており、海コンの現場も例外ではありません。
関東のドレージ業者の調査では、ドライバーの平均年齢は52.6歳。10年後には多くの現役ドライバーが引退を迎え、供給力の維持が極めて困難になります。
さらに、昨年からは時間外労働の規制も強化されており、1日に運べる距離・回数も制限されるようになっています。
モーダルシフトは進むのか?
じゃあ、コストも人手も足りないなら――
「内航船や鉄道に切り替えればいいじゃん」と思うかもしれません。
たしかにモーダルシフトへの期待は高まっています。
ですが現実には、鉄道も船も輸送キャパには限界があるのです。
内航船は、そもそも船員や港湾作業員が足りない。鉄道は、旅客と線路を共有していて貨物ダイヤを増やせない。さらに、ハイキューブコンテナが通れないトンネルもまだ多くあります。
今後の課題は「どう輸送するか」
港までは海外からのコンテナが着いても、そこから先、どの手段で・どうやって荷物を運ぶかが、日本の物流における最大の課題になりそうです。
コロナ禍、紅海危機、米中貿易摩擦…国際物流が激変するなかで、国内の陸送インフラも変化が求められています。