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船舶リサイクルが10年で倍増?香港条約と海運業界の未来

船舶リサイクルが10年で倍増?香港条約と海運業界の未来 | イーノさんのロジラジ

今日は少し専門的ですが、「船の終活」について取り上げてみたいと思います。

船にも寿命があって、最後には「解撤(スクラップ)」されるのですが、これからの10年、その数が倍増する可能性があるという話が出ています。

この記事では、

なぜ解撤量が増えるのか?
どこで解体されるのか?
環境への影響やビジネスへのチャンスは?

についてお話ししていきたいと思います。

なぜ今、船の解撤が注目されているのか?

きっかけは、2025年6月に発効する「香港条約」です。

この条約は、船舶を解体する際に安全かつ環境に配慮した方法で行うことを世界中に義務付けるもの。
つまり、「船の終わり方」にも国際ルールが求められる時代に入った、というわけです。

BIMCOの予測:船舶解撤は2〜3倍に拡大か

BIMCO(ボルチック国際海運協議会)の発表によると、
今後10年の船舶解撤量は、過去10年比で隻数ベースで約2倍、重量トンベースで約3倍に増加すると見られています。

2012年の過去最高記録(約1800隻・6000万DWT)を、これからの時代は毎年のように超えてくるかもしれないとのことです。

この背景には、複数の要因が重なっています。

1. 古い船の引退ラッシュ

2008〜2010年の造船ブームで建造された船が、耐用年数20年に近づいています。

特に平均年齢の高いバルカーやタンカーなどは、今後一気にスクラップ対象になる可能性があります。

2. 環境規制の強化

EEXIやCIIといった炭素排出量規制が本格化しています。

そのため、燃費性能の悪い古い船を手放し、新型の燃費効率が高い船に更新する動きが加速しています。

3. リサイクルインフラの集中

現在、重量ベースで約86%のリサイクルがバングラデシュ・インド・パキスタンの3カ国に集中しています。

スクラップ鋼材の流通市場と解体インフラが南アジアに偏っていることもポイントです。

4. 新造船との入れ替え圧力

船舶マーケットが好調な今、省エネ型の新造船が急速に増加しており、結果的に、旧式船の退役スピードも早まっています。

5. EUやIMOの規制動向

EUでは、「EU認定施設での解体」が義務付けられており、グローバル全体でも施設の整備や投資が今後不可避となるでしょう。

特に香港条約対応ヤードの不足が次の課題です。

船のリサイクルが“儲かる”時代に?

環境配慮型リサイクルのニーズが高まる中、認定施設の運営や、スクラップ鋼材の流通再利用素材のビジネスは、大きな成長市場となる可能性があります。

まとめ

今後10年で、船舶の解撤が倍増する時代に突入します。

香港条約の発効により、シップリサイクルはもはや“裏方の作業”ではなく、国際ルールと経済の最前線の話題になりました。

「つくる」「運ぶ」「終わらせる」までを考える時代。

物流と海運を語る上で、避けて通れないテーマとなっています。

動画視聴はこちらから