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米中関税の再開目前。アジア~米国航路の“運航キャンセル”の理由

米中関税の再開目前。アジア~米国航路の“運航キャンセル”の理由 | イーノさんのロジラジ

今回は2025年8月に迫る米中関税の再開を背景に、太平洋航路で起きている異変「ブランクセーリング(運航キャンセル)」の急増について解説します。

現場で働く皆さんにとって、単なる“運賃の話”では済まされない、今後の物流計画にも影響する動きです。

駆け込み需要はすでに終了

まず押さえておきたいのは、8月12日に米国が中国製品への追加関税を再開するという事実。

これにより、5月~6月には“関税回避”を狙った駆け込み輸送が発生していました。


しかし、ベトナムやタイなど東南アジアからの輸送は、8月1日の期限を超えるため7月後半の需要は急減

物流会社の現場でも「もう積む荷物がない」といった声が出始めています。

ブランクセーリングが急増中

海運データ会社eeSeaによると、7月のアジア→米国西海岸航路では17万5,000TEU分の船便がキャンセルされました。

これは配船量全体の11%に相当し、6月の9%から2ポイント増です。

・OOCLがPSXサービスの7月後半便をキャンセル
・CMA CGM、COSCOも13,000TEU級の大型船サービスを減便

この動きは、中国南部の港や東南アジアの積替港に波及し、航路全体が“しばらくお休み”状態になっています。

運賃は反転下落へ。スポット運賃に要注意

「便が減れば運賃は上がる」これは物流業界の常識。

実際、7月中旬にはスポット運賃が一時$2,500/FEU前後に上昇

Freight Right Global LogisticsのKhachatryan CEOも「供給減が価格を押し上げた」とコメントしています。


ただ、現場の実感は違います

実際のスポット価格は$1,700~1,800の低水準まで下落傾向。

Plattsは7月16日時点で$1,733/FEU、Drewryの上海-ロサンゼルスレートは$2,817/FEUを記録していますが、需給のアンバランスは顕著です。

8月以降も「閑散期」が続く見通し

米国荷主の多くは、関税を恐れてすでに在庫を前倒しで輸入済み

コンサル会社365 LogisticsのTejwani CEOは、「8月以降も需要は軟調。在庫が足りている以上、追加の輸入は見込めない」と指摘しています。


つまり、“輸送量の谷間”が秋まで続く可能性が高いというわけです。

まとめ

この状況で問われるのは、予測力と情報収集力

「いつ・どの航路で・どのキャリアが減便しているのか」「どの港を経由する便が残っているのか」このあたりの情報を正確に押さえ、顧客への提案を変えていく必要があります。

「積めると思ってたのに便が飛んだ」は信用を失います。

2025年後半は、“空白の海”をどう乗り越えるか。その判断力が、物流企業の命運を分けるかもしれません。

動画視聴はこちらから