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日本郵便、ロジスティードへ出資!公共インフラと企業戦略の交差点

日本郵便、ロジスティードへ出資!公共インフラと企業戦略の交差点 | イーノさんのロジラジ

2025年10月、日本郵便ロジスティード(旧・日立物流)に対して出資を行う方針を固めたことが報じられました。

このニュースは、物流業界のみならず、公共インフラと企業経営の在り方という広い視点でも注目を集めています。

外資傘下で再始動した日本発物流企業

ロジスティードはもともと日立グループに属する日立物流でしたが、現在は米国の投資ファンドKKRの傘下で運営されています。

企業向けの3PL(サードパーティ・ロジスティクス)SCM(サプライチェーン・マネジメント)領域に強みを持ち、特に製造業や流通業への高度な物流サービスを提供している企業です。

また、国内外での物流インフラの強化やIT化を進めており、日本郵便にとっては自社の弱点を補える存在として注目されています。

日本郵便が狙う「対等な連携」

今回の出資は、「買収」ではなく業務提携を見据えた資本参加です。

日本郵便は全国の郵便局ネットワークと宅配便とは異なる公共的役割を持っていますが、法人物流や高付加価値物流では民間企業に遅れを取っているのが現実です。

一方、ロジスティードは高度な物流設計力を持ちつつも、消費者向けネットワークやインフラには限界があります。

両者の強みを組み合わせることで、以下のようなシナジーが期待されます。

  • 全国レベルのラストワンマイル配送網 × 企業向けの高度な3PLサービス
  • 郵便局の物理インフラ × ロジスティードのIT主導の物流システム
  • 公共的役割の強化 × 収益性の高い法人ビジネスへの展開

こうした視点から、出資は対等な補完関係を築くための手段と見るべきでしょう。

「トールの二の舞か?」という懸念

一部では、2015年のトール買収(日本郵政による約6,200億円の大型買収)の記憶から、「また失敗するのではないか」という懸念の声もあります。

ただし今回の出資は経営権の取得を伴わないマイナー出資であり、事業の統合や海外展開を狙ったものではありません。

むしろ「支配ではなく連携」という形をとることで、かつての反省を踏まえた堅実な戦略と評価する声も多いのです。

公共企業としての説明責任と税金の視線

現在も日本郵政グループには政府保有の株式が存在し、ゆうちょ銀行の株式売却益は震災復興資金に充てられています。

また、郵便サービスの赤字補填として2024年度には約650億円の税金が投入されています。

そのため、たとえ出資が「郵便事業の収益」から行われるとしても、間接的に税金が使われているのでは?という視線が向けられるのは避けられません。

こうした状況下での資本参加には、より一層の説明責任と成果が求められます。

物流の高度化と公共インフラの再定義へ

今回の出資は、従来のような統合や支配を目指すものではなく、互いの強みを補完しあうパートナーシップの構築に重きが置かれています。

  • 日本郵便はロジスティードを通じて法人物流の競争力を高める
  • ロジスティードは郵便ネットワークを通じて消費者接点を拡大できる

ただしロジスティードはあくまでKKRという外資系ファンドの傘下にある企業であり、将来的に再上場や売却という出口戦略が取られる可能性もあります。

そのとき、日本郵便の立ち位置がどう変わるのか、今後の戦略が問われていくでしょう。

日本郵便とロジスティードの提携は、物流の高度化と公共インフラの新たな在り方を示す一歩となる可能性があります。

動画視聴はこちらから