投稿日:2025.11.12 最終更新日:2025.11.12
物流コストは下がらない時代へ。JILS調査が示す「荷主の新たな現実」
日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が発表した「2025年度物流コスト調査報告書(速報版)」によると、荷主企業の売上高に占める物流コスト比率は2024年度で平均5.36%となりました。
前年度比ではわずかに0.08ポイント下がったものの、過去20年間で4番目に高い水準です。
運賃の値上げ、人件費の上昇、法令対応コストの増加——。
物流コストの“高止まり”は一時的ではなく、構造的な変化として定着しつつあります。
今回は、その要因と企業が取るべき対応策を見ていきます。
CONTENTS
売上高物流コスト比率は依然高水準に
調査対象は国内196社。平均値は5.36%でした。
しかし、2年連続で回答した130社に限定すると、実際には0.03ポイント上昇し5.75%。
つまり、数字上は下がって見えても、実態は高コスト体質が続いていることが分かります。
さらに販売単価と物流単価の変動指数では、物流単価が+40、販売単価が+33。
物流コストの上昇スピードが売上高の伸びを上回っており、2025年度もコスト上昇傾向が続くと予想されています。
輸送費の上昇が最大の要因
コスト上昇の中心はトラック輸送費です。
177社中、単価上昇と回答した企業は88%に達し、減少はわずか3%。
まさに「ほぼ全社で上昇」という結果となりました。
さらに荷役費、保管費、包装費なども半数以上の企業で増加。
物流全体にコスト上昇圧力がかかっています。
背景には「2024年問題」による人件費上昇があります。
ドライバーの労働時間規制、燃料・資材の高騰、新法対応コストが重なり、企業の物流費は複雑化しています。
荷主の対応策:削減から「再設計」へ
では、荷主企業はどう動いているのでしょうか。
JILSの調査では、単なる「コスト削減」から全体最適化への再設計へと移行する動きが見られます。
主な取り組みは次の通りです。
- 物流ネットワークの再構築
- サプライチェーン全体の効率化
- 現場の生産性向上
- 人材マネジメントの改善
また、改正物流効率化法(荷待ち時間短縮・積載効率向上)への対応も進展中です。
AIによる出荷計画自動化、共同配送(共配便)の導入など、「テクノロジー×協働」の取り組みが広がっています。
コスト削減から付加価値創出へ
今や「物流コストを下げる」だけでは限界です。
日本のサプライチェーンは長らくコスト削減を前提に設計されてきましたが、ドライバー不足・法改正・物価上昇という構造的変化が進行しています。
これからは物流を「削減対象」ではなく「価値を生む領域」として捉える必要があります。
- 環境対応型輸送の導入でESG評価を高める
- 安定的な物流をブランド価値として発信する
- リードタイム短縮による顧客満足度の向上
物流は単なるコストではなく、企業競争力の源泉なのです。
まとめ
物流コスト上昇は一時的ではなく構造的。輸送費・人件費・保管費が複合的に増加する中、荷主はDXとデータ活用による効率化に動いている。
物流を守ることは、経営を守ること。
2025年以降のサプライチェーン戦略は、「持続可能な物流」をどう設計するかが問われています。






