投稿日:2025.11.13 最終更新日:2025.11.13
エタノール船燃料が本命候補に浮上。海運脱炭素を左右する次世代エネルギーとは
海運業界ではいま、次世代燃料を巡る競争が激しさを増しています。
従来はメタノールやアンモニア、LPGなどが中心でしたが、ここにきてエタノールが新たな有力候補として急浮上しています。
なぜエタノールが注目されるのか。メタノールとの違いは何か。
エンジンメーカーの最新動向とともに、海運の脱炭素戦略にどのような影響があるのかを解説します。
CONTENTS
エタノールが次世代船舶燃料として注目される理由
エタノールが船舶燃料として期待されている背景には、大きく三つの理由があります。
- 既に大規模な供給基盤がある
- カーボンニュートラル燃料として扱いやすい
- メタノールとの高い互換性がある
1. 既に大規模な供給基盤がある
エタノールはバイオマス由来で生産され、北米・南米を中心に大量生産されています。
自動車用燃料として普及しているため、供給インフラが既に整っている点が大きな強みです。
2. カーボンニュートラル燃料として扱いやすい
バイオエタノールはライフサイクル全体で実質的にカーボンニュートラル。
IMO規制にも適合しやすく、企業にとって導入障壁が低い燃料です。
3. メタノールと高い互換性がある
アルコール系燃料で性状が近く、タンクや供給設備を共用しやすいという特長があります。
この互換性の高さが「エタノールが一気に注目された最大の理由」と言えます。
なぜ今になってエタノールが注目され始めたのか
これまで船舶用途では普及が難しいとされてきたエタノール。
しかし、2024〜2025年に状況が大きく変わりました。
- メタノール燃料船の急増
- グリーンメタノール供給不足の深刻化
メタノール需要が急拡大する一方で、グリーンメタノールは供給が追いつかず高騰。
その「代替燃料」としてエタノールが一気に脚光を浴び始めました。
エンジンメーカーもエタノール対応を加速
海運の脱炭素化はエンジンメーカーの対応力が鍵を握ります。
WinGD とエヴァレンス(旧 MAN ES)という2大メーカーが、相次いでエタノール対応を発表しました。
- WinGD:X-DF-Mをベースに燃料弁・チューニング変更で対応、2027年初号機予定
- エヴァレンス(MAN ES):試験機でエタノール燃焼に成功、商用化へ前進
この流れにより、船社の採用判断が今後さらに加速する可能性があります。
海運業界におけるエタノール燃料の将来性
エタノールは「現実的な導入可能性」が評価されています。
- メタノール船との互換性で移行コストが低い
- 供給網が整っており導入リスクが小さい
- 脱炭素規制に適合しやすい
今後の焦点は次の三つです。
- 新造船発注の動向
- 各国の燃料政策・規制整備
- バイオエタノール供給拡大(南北アメリカ中心)
2026〜2028年にかけて、船舶燃料市場は大きく再編される可能性があります。
まとめ
エタノールは供給基盤・互換性・環境性能を兼ね備え、次世代船舶燃料の有力候補として急浮上。エンジンメーカーの対応加速により、実用化が一気に進む可能性が高い。
メタノール中心だった脱炭素燃料の流れに、エタノールがどこまで存在感を示すのか。
世界の船舶燃料は今、パラダイムシフトの入り口に立っています。






