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米国が鉄鋼関税を50%に倍増!日米貿易とUSスチール買収に波紋

米国が鉄鋼関税を50%に倍増!日米貿易とUSスチール買収に波紋 | イーノさんのロジラジ

2025年6月、トランプ政権が打ち出した鉄鋼関税の50%引き上げが、日本とアメリカの鋼材輸送、そして鉄鋼業界全体に大きな影響を及ぼしています。

鉄鋼関税が50%へ引き上げられた背景

2025年6月4日、米国は鉄鋼とアルミニウムの輸入関税を従来の25%から50%へ引き上げました。

この政策の目的は「国内鉄鋼産業の保護」とされており、日本を含む主要輸出国には大きな打撃となっています。


なお、この関税制度は2018年に第1次トランプ政権下で導入され、バイデン政権でも継続。日本には年間125万トンまでの関税免除枠が設けられていました。

日本からの輸出量はどうなったか

2024年、日本から米国への鋼材輸出は121万トンで、月平均10万トンペースと、関税免除枠内で安定していました。

しかし、2025年3月に免除枠が撤廃され、さらに6月には関税が50%に引き上げられたことで状況が一変。

4月の輸出量は前年同月比で18%減となり、約6.7万トンにまで落ち込みました。

この影響は港湾や近海船にも波及し、物流業界には不透明感が広がっています。

高級鋼材だけは輸出が続く見通し

関税が上がっても、引き続き需要があると見込まれているのが「高級鋼材」です。

高級鋼材の例:

  • 自動車や航空機エンジン向けの高耐熱・高強度鋼
  • 発電所や橋梁向けの高耐久・高性能鋼材

これらは米国内で十分に製造できず、日本からの輸入に頼らざるを得ないため、関税を払ってでも調達される可能性が高いとされています。

日本製鉄によるUSスチール買収の最新動向

2025年、日本製鉄が進めている米USスチールの買収(約140億ドル=約2兆円)にも注目が集まっています。

トランプ大統領は当初「USスチールはアメリカ人が所有すべきだ」として反対姿勢を示していました。


しかし、2025年5月には次のような発言に転じています。

「この取引はアメリカの製造業を再生させるブロックバスターだ」

トランプ政権が買収を容認する背景

  • 高級鋼材の価格上昇による建設・インフラへの悪影響を避けたい
  • 日本製鉄が米国工場への140億ドル投資・労組契約維持・本社のピッツバーグ残留を約束
  • 国内で安定供給できればインフレ対策としても有効
  • 中国資本による買収を防ぎ、同盟国日本との関係強化を重視

これらの理由から、政権は買収に前向きな姿勢へと変化したと見られます。

まとめ

今回の鉄鋼関税50%引き上げは、日本とアメリカの鋼材取引に大きな影響を与えています。

数量ベースでは輸出が減少する一方、高級鋼材のような代替困難な製品は今後も取引が継続される見通しです。


また、日本製鉄によるUSスチール買収が成立すれば、米国内で日本品質の鋼材供給体制が整い、これは米国製造業の再建にとっても大きな意義を持つことになるでしょう。

動画視聴はこちらから