投稿日:2025.06.17 最終更新日:2025.06.17
中国発アメリカ向けのコンテナ運賃が急落。その背景とは?

2025年6月、中国発アメリカ向けのコンテナ運賃が急落しています。物流・海運業界にとって注目すべきこの変化について、背景と今後の見通しを詳しく解説します。
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上海発アメリカ西岸向け運賃が26%超の下落
上海航運交易所(SCFI)の2025年6月13日付データによると、上海発アメリカ西岸向けの運賃は前週比で26.5%減の4,120ドル/FEUに。東海岸向けも2.8%減の6,745ドル/FEUとなり、全体的に下落傾向が見られます。
1か月前には、米中関税緩和による駆け込み需要で運賃が2倍以上に急騰していたため、今回の下落は非常に急な動きと言えます。
背景:米中関係と駆け込み需要
5月中旬、米中間で一部関税の引き下げが発表されたことで、アメリカ側の仕入れが集中し、短期的に運賃が高騰しました。SCFIによれば、4月中旬と比べて2倍強にまで跳ね上がり、市場は供給不足に陥りました。
供給の回復で運賃は反転下落
その後、船社各社が停止していたサービスの再開、新規航路の開設、追加船腹の投入を行い、供給量が回復。需給バランスが一気に緩んだことで、運賃は急落に転じました。
韓国・釜山発の米国西岸向けも前週比9.2%減の4,921ドル/FEUとなっています。
今後のカギは米中関税交渉
今後の運賃を左右する最大の要素は米中間の関税措置です。
- 中国発米国向け:追加関税55%(相互関税10%+違法薬対策20%+旧トランプ関税25%)
- 米国発中国向け:追加関税10%
これらは一時停止されていましたが、停止期間は7月に終了予定。延長の有無が運賃・需要に大きな影響を与えます。
他航路の動向:地域差が顕著に
アメリカ向け以外の航路でも変化が見られます。
- 上海発欧州向け:1,844ドル/TEU(前週比+10.6%)※4週連続上昇
- 地中海向け:3,190ドル/TEU(前週比-3.4%)※4週ぶり下落
- ペルシャ湾向け:2,083ドル/TEU(前週比+8.0%)※6週連続上昇
- 南米東岸向け:4,727ドル/TEU(前週比+19.4%)※5月から約3.4倍
- オセアニア向け:745ドル/TEU(前週比+8.6%)※9週間ぶりプラス
特に南米向けは、需給ひっ迫により顕著な高騰を見せています。
まとめ:激変する市況を読み解く力が鍵に
今回の運賃下落は、単なる価格変動ではなく、国際情勢・関税・船社の戦略が複雑に絡み合った結果です。
海運市場は常に変動しており、数週間で真逆の展開になることも珍しくありません。物流・貿易の担当者にとって、こうした変化を日々チェックし、最適な判断を行う力が求められます。