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米製造業は復活するのか?関税の裏側と“空手形”の投資

米製造業は復活するのか?関税の裏側と“空手形”の投資 | イーノさんのロジラジ

今回は「米国製造業の復活は本当に進んでいるのか?」というテーマでお届けします。


アメリカ株、最高値圏。でも……

まず足元のアメリカ経済から見ていきましょう。

2025年4〜6月期、米上場企業の純利益は当初予想の2倍に。株価も再び史上最高値圏に差し掛かっています。


しかし、稼いでいるのはテックと金融ばかり

S&P500に採用されている企業のうち、テクノロジーは+20〜+40%金融も+10%と堅調。

一方で製造業、生活必需品、素材などはマイナス成長と、明暗が分かれています。

製造業が伸びない理由=“関税”

大きな要因はトランプ政権による関税政策です。

たとえばP&Gは、年間10億ドル規模の関税負担を見込んでいます。

「関税は輸出先が負担する」とされますが、実際に負担しているのは米国内企業です。

関税の負担者は誰か?

ゴールドマン・サックスの分析によれば、関税の80%はアメリカ企業が負担している可能性が高いとのこと。

輸入物価は変化せず=輸出側が値下げしていないため、アメリカ側の輸入企業が損をしている構造です。

価格転嫁は簡単ではない

たとえばハズブロは「製品が並ぶまでに5〜8カ月」「今年後半には価格が上がる」と述べ、ナイキも「年内に値上げ必至」としています。

ですが、消費者の購買力が弱いため、価格転嫁は困難です。

製造業回帰を支えるはずの海外投資も……

もう一つの柱、海外からの直接投資にも不安があります。

EUや日本、韓国などが数千億ドル規模の投資を「約束」していますが、実際の投資額は大きく乖離しています。

2025年1〜3月の実行投資:528億ドル
投資意向として示された金額:1831億ドル

つまり、“空手形”のような投資意向だけが目立つ状況です。

まとめ:復活には遠い現実

「製造業の復活」はスローガンにとどまり、実態は厳しい。
コスト増と価格転嫁の壁、実行されない海外投資、そしてインフレ再燃リスク。アメリカ製造業の本格復活には時間がかかるといえるでしょう。

動画視聴はこちらから